私ども銀の庵グループでは介護保険・医療保険などをご利用いただき、年間約60人ほどの方の、在宅での看取りをご支援させていただいております。
多くの方は末期癌ですが、中には重度の肺炎や神経難病の方々もいらっしゃいます。
現在わが国では、終末を病院などの医療機関で迎えられる方が80%以上にのぼります。でも、「最期は自宅で・・・」と希望される方も、同じく80%くらいいらっしゃるのです。つまり、最期は自宅を望んでも、現実にはその望みは叶わない・・・そんな現状があるのです。
数年前になりますが、こんな方がいらっしゃいました。
末期癌で余命数日と診断された70歳代の女性の方でした。「どうせ治らないなら最期は自宅で・・・」と希望され、私どもが入院先に面会にお伺いした翌日に、急きょご自宅に戻って来られることになったのです。
ご自宅に戻って来られた翌朝、その方は元気だった頃と同じようにキッチンに座り(車イスでしたが)、木漏れ陽の差し込む大きな窓から庭の木々を眺め、大好きなコーヒーを飲まれたのです。(実際には食事がほとんど摂れない状態でしたので、ほんの数口ではありましたが・・・)
そして、こう言われたのです。「またこんな時間が持てるなんて、思ってもみなかった・・・」と。
人の命は、それが終わりに近づくと、急にきらきらと輝きを増すことがあります。この方の場合が、まさにそうでした。この方は、その数日後に穏やかに息を引き取られましたが、人生最期のひと時を、住み慣れた我が家でご家族と共に、密度の高い時間を過ごされたのです。
今年もまたお盆になり、その方の事を想い出します。
人は最期には死ぬのではなく、人は死ぬまで生き抜くのです。
木漏れ陽の中に、にっこりと微笑まれたあの方の笑顔が、ふっ・・・と浮かんだような、そんな気がしました。
コメントをお書きください