「最終目標は車椅子です」
歩行器を使って歩行されていた90歳女性のA様。
転倒して骨折し、1ヶ月程入院されていました。
退院時にドクターから言われたのが「最終目標は車椅子です」
入院中の1ヶ月間は、ほとんど寝たっきり。もう今までのように歩くことは出来ないという事です。
退院にあたり、福祉用具でレンタルしていた手すりと歩行器をお返しし、車椅子を用意しました。
病院での排泄は、定時のオムツ交換で尿意便意があるのかどうかは不明とのこと。
今まではほとんど失禁することもなかった方ですが、オムツも用意しました。
高齢者の転倒は、生活を一変させてしまいます。
ところが…です。
退院直後より「トイレ連れてって〜」のナースコールの嵐。
尿意便意しっかりあるじゃん!ならば!と、車椅子でトイレにお連れする。
20分に1回、30分に1回。
何度も何度もトイレとの往復。
退院1週間後。
夜勤者が巡回していると、トイレに座っているではありませんか!
目を疑いたくなるような、状況がつかめない夜勤者。。
そうなんです。
最終目標が車椅子だなんて、ご本人の知った事ではありません。
トイレに行きたくなったからトイレに行っただけ。
歩いちゃったのです。
歩けちゃったのです。
もちろん私達も、もしかして歩こうとされるかもしれないと思い、策は練っていましたが、それも追い付かないくらいのスピードです。
ご本人は転倒した事も、骨折した事も、入院していた事も覚えてはいません。
「ちょっと足の痛かとけど、どげんしたとじゃか。。」と笑顔。
驚くべき回復力です。
「トイレに行きたい」その気持ちが、足を前に一歩踏み出させたのです。
「食事・入浴・排泄」の大切さ。
生活に大切な、そのお手伝いをするのが私達介護スタッフの役割なのだと再認識させて頂いた出来事でした。
骨折という病名よりも、心と身体の状態を知る事。
ご本人が一番よくわかっておられます。
「骨折しとるとね?ありゃ〜」
そう言ってまたトイレへ。
認知症は神様の贈り物!
有料老人ホーム銀の庵 古殿
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