*「パーソン・センタード・ケア」から「畑・センタード・ケア」へ

 パーソン・センタード・ケアとは、認知症をもつ人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行おうとする認知症ケアの一つの考え方です。この考え方は、自然科学や神学を修めた後に老年心理学教授となったトムキットウッドが、1980年代末の英国で提唱したものです。


「その人らしさ」とは。。と悩んだ結果、有料老人ホームの中庭に小さな畑を作りました。


ずっと畑を作りたいと思ってはいたものの、全く知識もなく諦めていたところ、「はいは〜い!やりま〜す!」と手を挙げてくれたスタッフ。

自宅から土を運び、畝を作り、苗を買ってきてくれました。


畑作りが趣味だった方や、お家が農家だった方々と一緒に、ピーマン・きゅうり・トマト・ナス・メロンを植えました。


畑までは歩行器を押して行くのに、畑に着いた途端、さっさと歩行器を横にやり畑の中に入って行かれます。

草を取り、土をなおし、苗の11本に手をかけていかれるその姿はイキイキとされています。


夕方になると、成長具合を観察に、お庭に散歩に出てこられる方

畑仕事はしたことがないけど、野菜が出来たら美味しかろ〜と、食べるのを楽しみに見に来られる方、など畑を中心に人が集まるようになってきました。


パーソン・センタード・ケアの考えから始まった畑ですが、今では畑・センタード・ケアです。


お部屋の中では歩行器がないと不安定な足取りでも、土の上では畝と畝の間の細い道を歩行器なしで上手に歩かれます。

今日排便があったかどうかは忘れても、夕方の畑の観察は忘れません。


収穫するまで上手く育てることができるかどうかわかりませんが、経験豊かな先輩方がなんとかしてくれるだろ〜と、口ばっかりの素人の私は、のんびりと見学させてもらっています。


畑にはパーソン・センタード・ケアの5つの要素

・自分らしさ

・結びつき

・たずさわること

・共にあること

・くつろぎ

がぎっしり詰まっています


有料老人ホーム銀の庵 古殿